学習科学においては、「学習方略(どうやって学ぶか)」が大事と言われているのですが、
今回は「学習方略の違いがどれだけ結果に影響を与えるのか?」について解説していこうと思います。
まあ、言ってしまえば、学習方略の重要性を数字で示そう!という記事になります。
効果的な学習方略で数週間〜数か月後の成績が大きく向上
出典:
Dunlosky et al. (2013)
“Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques”
Psychological Science in the Public Interest
このレビュー論文では、10種類の学習法の効果をメタ分析で評価しています。
その中で、高評価を得た「効果的な学習法」は以下になりました
- 分散学習(分けて学ぶ)
- テスト効果(思い出す練習)
- 精緻化(自分の言葉で説明)
- 自己説明(なぜそうなるかを言語化)
これらの方法を使うと、数週間〜数か月後の成績が大きく向上することが示されたそうです。
たしかに、どの方略も、長期的な成績向上に役立つと言われており、納得の結果です。
例えば、テスト効果では
- テストを使った復習 vs 読み返しだけ
→ 数週間後のテストでは30〜50%もの差がつくケースもある
とのこと。
成績上位層は、下位層よりも2〜3倍多くの学習方略を使っている
出典:
Zimmerman & Martinez-Pons (1986)
“Development of a structured interview for assessing student use of self-regulated learning strategies”
二つ目は、中高生を対象に、自己調整学習(計画、モニタリング、方略使用)を調査したもの。
その結果、成績上位層は、下位層よりも2〜3倍多くの学習方略を使っていたことが分かりました。
確かに、成績の良い人は、自然と自己調整学習を行っているように見えますよね。
学習方略を教えると、誰でも伸びる
というわけで、「学習方略が成績向上に効く!」というのは間違いないのですが、学習方略のさらに良いところは「学習方略を使うと誰でも成績が伸びる」というところです。
出典:
Hattie, J. (2008)
“Visible Learning”
こちらは世界中の80万以上の生徒データをメタ分析したもの。
その結果、「学習方略を生徒に教えること」は効果量0.62(平均以上の強い効果)を持つことがわかりました。
効果量0.6以上というのは、1年間で学年の半分〜1年分の伸びを上乗せできるレベル。
日本の大学受験における影響は?
次に、「日本の大学受験において学習方略はどんな影響を持っているのか?」について解説していきます。
偏差値60以上の受験生は、平均してより多くの戦略的な学習方略を使っていた
出典:
矢澤真幸・渡辺安虎(2001)
「受験勉強における学習方略の使用と成績との関連」
(『教育心理学研究』第49巻 第1号)
内容としては、
- 受験生(高校3年生)を対象に、学習方略と成績の関係を調査
- 使っていた学習方略を20種類以上に分類し、自己報告で調査
その結果、成績(模試の偏差値)との相関は次のようになりました

精緻化方略、メタ認知方略、テスト方略の相関が高くなっており、こちらも納得の結果ですね。
また、
- 偏差値60以上の受験生は、平均してより多くの戦略的な学習方略を使っていた
- 特に「自分の理解を点検する力(メタ認知、セルフモニタリング)」が成績に大きく関わっていた
ことも分かっています。
成績が良い人ほどより多くの学習方略を使っているというのは、他の研究でも示されていることなので、これも信頼性の高い結果と言えそうです。
認知的負荷の高い学習の方が、模試の点数上昇率が高い
出典:
川島隆太(東北大学)らの研究
「脳科学から見た学習方略と学力の関係」(2000年代)
こちらは、高校生を対象に、模試の成績を上げるために有効な方略を調べた研究です。結果は、
- 「ただ繰り返す」よりも、「思い出す」「自分で説明する」「問いを立てる」といった認知的負荷の高い学習の方が、模試の点数上昇率が高い
とのことで、例えば、英単語の暗記も「見る・書く」より「思い出す・使う」ほうが、数ヶ月後に2倍近い定着率の差があったとのこと。
結論
というわけで、結論は
勉強の仕方を知らない vs 知っているで、
テストの点数、定着率、成績の伸びにおいて数十%以上の差がつく可能性がある
ということになるかと思います。
これは科学の世界では常識ですが、「量」ではなく「質」を変えることが、圧倒的に効きます。
逆に言えば、方向を間違えた努力をいくら積み重ねても、成績はたいして伸びません。
もっと具体的に、「じゃあどんな勉強法を身につければいいの?」ってところは、オンラインサロン限定記事で詳しく解説していきます。
では、今回はここまで
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